正心調息法は、内科医であった塩谷信男博士が、子供の頃の病弱な体質を改善するために様々な呼吸法や健康法を体験しながら、自分に最適な手法を探っていかれた結果、創り上げられた腹式呼吸法です。簡易な腹式呼吸のステップに、言葉や文字の力を取り込んだり、想像力とかイメージ力も取り込むことによって、自分の健康だけではなく、様々な願望実現を図る手法になっています。
正心調息法自体は博士の還暦の頃には一応の完成を見ていたようですが、とくにそれを一般に伝えようとはされていませんでした。ですが91歳の誕生日のこと、突然この呼吸法をこのまま墓場に持っていってはいけない、という強い思いに駆られ、それから正心調息法に関する講演、著作活動を始められることになりました。

正心調息法の特徴

正心調息法の特徴としては次のようなものが挙げられます。

 ①根源的で、かつ簡易な呼吸法である。
 ②呼吸法のステップの中に、「想念・内観」と呼ぶ願望実現のためのアプローチが組み込まれている。
 ③近年注目されている健康に関する手法が、自然に組み込まれている。
   →鼻呼吸、お尻すぼめ(肛門を締める)、等々
 ④実修するにあたって、細かな禁止事項とか強制事項がない。
 ⑤難行苦行を要求しない。無理をしないことが原則。

それぞれの項目について、簡単に説明していきます。
■正心調息法は根源的で簡易な呼吸法
「息をする」「水を飲む」「食べる」という人間の生存に関わる3つのことの内で、それを全くしない場合、死に至る時間の最も短いものはご存知のように「呼吸」です。つまり呼吸というのは生物にとって最も根源的な機能です。しかも呼吸によって摂取する酸素は、根源的であるが故に水や食物より遍く存在しています。

また睡眠中を考えれば明確なように、「飲む」「食べる」という行為は意図しなければ行えない行為ですが、「呼吸」は意図しなくとも行われている行為です。呼吸のための器官「肺」は、心臓と同じように本来は自律的に休みなく働く不随意筋に支配される植物性の器官です。ただ恐らくはこの地上で活動していくためにより多くの酸素の摂取が必要になり、随意筋の支配も受けるようになっています。つまりは呼吸は不随意筋の働きも有って無意識でも行える行為であるため、軽視されがちな機能であると言えるのかも知れません。

正心調息法は、その根源的な機能である呼吸を、塩谷博士が「単純なものは万能である」という信念の下で作り上げた、最も簡易な方法で実践できる腹式呼吸法です。とくに呼吸のステップの中に「小息」という中継ぎの息を組込むことで、他の呼吸法に比べて実践しやすい手法になっています。
■呼吸のステップの中に願望実現のためのアプローチが組み込まれている
「吸息(息を吸う)」「充息(息を止める)」「吐息(息を吐く)」という各ステップに対応して、言葉や文字の力(想念)を全て過去形、または過去完了形で断言して 取り込み、想像力やイメージ力(内観)も願いが叶ってしまった後のことを思い描きます。それによって、健康面だけに限らない自分の願望実現を図ることができます。
■近年注目されている健康に関する手法が、自然に組み込まれている
近年、鼻呼吸の重要性が叫ばれ、花粉症や自己免疫疾患にも口呼吸の弊害が指摘されるようになってきています。
また「肛門を締めて呼吸を止め、しばらくしたら肛門を緩めて呼吸する」という「お尻すぼめ」の手法を一日に何回か続ける。それが更年期障害の予防や改善、尿失禁とか冷え性、更には慢性的な腰痛などの改善に繋がるという話が健康雑誌等で紹介されています。
正心調息法には「鼻呼吸」とか「お尻すぼめ」とかの方法が、流れの中に組み込まれています。
■実修するに当たって、細かな禁止事項とか強制事項がない
正心調息「」というからにはもちろん基本的な原則、パターンは有るわけですが、あまり細かなところで「ああしろ」「こうしろ」という制約条件は有りません。

例えば実修する時間帯。朝でも昼でも夜でも、実修中に邪魔が入らない時間帯を選んでもらえば問題有りません。

他の呼吸法だとよく指示される、呼吸を始めるに当たっては「まず吐き切ってから」だとか、息を吐くステップではヨガのように「お腹を凹ませて吐き切る」という必要も有りません。ただしこれも「そうしてはいけない」ということでは有りません。その方がやりやすい人はそうすればあって、万人に強制する必要はない、ということだけです。

吸うのに何秒、吐くのに何秒、というような時間的な目安も有りません。仮にでも具体的な数字を挙げてしまうと、それにこだわってしまう人が出てくるから避けた方が良い、というのが博士の考え方です。呼吸の永さというのは人それぞれであるから、自分のペースで実修するのがが良い。継続していくうちに自然と永くなってくるものだと博士は言われていました。
■難行苦行はしない。無理をしないことが原則。
正心調息法は「無理をしない」「頑張らない」というのが原則です。
「吸息⇨充息⇨吐息⇨小息」の切換も、「苦しくなったら」ではなく「苦しくなる前に」次のステップに移る、というのが原則。呼吸法を実践すること自体がストレスになってしまっては本末転倒です。

正心三原則の中の「愚痴は言わない」も、意識しすぎて心に溜め込んでしまうとかえって身体に良くない。そういう場合は、博士は「大声で笑うように愚痴を言いなさい」と言われます。実際にはなかなかそうはいきませんけれど、ずっと溜め込んで悶々とするよりは、口に出してさっと忘れてしまう方が良い、ということですね。

正心調息法は1日に25回実修するというのが目標ですが、これも今日は20回しかできなかったとか、忙しくて1回もできなかったなどとクドクド悩むのではなく、次の日からまたやり始めればよいということです。